第169章

「お目にかかれて光栄です、イシス閣下」

 イシスは魔導師の礼で返した。

「ご機嫌よう、サン・ロット帝国皇帝陛下」

 それからサン・ロット八世は、主人として実に手厚くイシスをもてなした。いきなり「帝国に来い」とは言わない。だが会話の端々で帝国の国力と厚遇を匂わせ、彼女に『サン・ロットを選べば間違いない』と思わせる――そういう運びだ。

 公爵は真面目な顔で陛下の言葉に耳を傾けつつ、同時にイシスを観察していた。娘が緊張で口を利けなくなるのでは、と危ぶんでいたが、実際のアリシアは上々だった。もともと表情が薄く寡黙な性分だ。公爵の目にも、綻びは一つも見えない。

 そもそも会話の形が、陛下がど...

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